オージェ
プロフィール
自身がオークに少し近いということもあり、彼女はオークの活躍する物語が好きだった。祖先の活躍を物語として聞くうちにモーゼの戦術やアグリスト教団の訓練等に興味を示し、いつかアグリストになりたいという憧れを強く抱いた。そのために小さいころから軍事の研究、鍛錬に自ら励み、一族からは軍事の天才との評価が下されるほどになった。
この天才は切り札として使えるようにした方がよいと判断されたため、オージェは秘蔵っ子としてその存在を隠されるようになる。名声や戦功は他人の物になるよう、表向きは末席の指揮官として軍議等に参加しながら現場の総指揮を執り、数多くの内乱を陰から成功させてきた。アグリストIIの血が混じっているため、若干オークに近い空気を出していることもこの隠蔽工作には大いに役立った。年少の傭兵指揮官のように見られたのである。
国を追われ傭兵として生きるオークは数多く存在したし、そのなかで不幸にして年少のものが指揮を預かることも少なくなかった頃であるため疑う者は少なかったし、使い捨て傭兵の末席の指揮官など覚えようとする者も少なかった。
アグリストVIとの出会い
ギークでアグリストを名乗る女性の護衛が居る。この知らせを聞いたオージェは是非ともその女性に有ってみたいと思いギークでの紛争に極力顔を出すように努めた。そしてついにとあるパーティ会場にてアグリストVIと遭遇し、二言三言挨拶を交わした。
アグリストVIが現在護衛についている弱小貴族の属した派閥はバルカムット原理主義の後押しによって大きくなった勢力でもあった。が、代替わりによって権力の背景を自身の実力と勘違いするものが中核に増えており、改革の候補として挙げられていた。
裏工作
新たにその土地を乗っ取る新勢力、反逆の計画を立てていたとするでっち上げの書類などが準備され幅広い範囲での没収が一気に行われた。もちろんこれに対して反発する勢力は現れたが、オージェらは彼らに武器、食料等の提供を裏から行い武装蜂起を誘導した。
新勢力と旧勢力の武力衝突は当初は旧勢力の勢いにいくつかの領土の奪還を許したが、一定以上の大きさからは兵站線の問題で行き詰まりを見せ始めた。戦闘の成果が得られず旧領地を解放した勢力などは戦闘の継続に対して消極的になり始め、そう言った勢力に対してオージェは裏切りの工作を持ちかけた。反乱の総指揮を取っていたオレスト・ガヴラスを始めとして何名かがこの工作に同調し、物資の支援と共に指示が出されることとなった。
旧領地解放済みの勢力としては早めに戦闘を切り上げてしまいたい所であったが、まだ領地を取り戻していない勢力としては戦闘の継続に前向きであり、中でも計画では近く解放の予定となるアグリストVIが仕える勢力は最も高い戦功をあげていた。
決戦
アグリストVIが守る勢力がついに自身の旧領を解放する番となった時、オージェは準備していた様々な工作をここで発動させた。旧領解放を望む民衆の中には扇動家を投入し自発的な蜂起を促した。さらに裏切り工作をしていたオレスト・ガヴラスには増援を派遣しないよう約束をとりつけ、森の中には数か月前から伏兵を配置していた。
孤立していたアグリストVIの部隊は、強引に合流した傭兵シュヴァルツ・カッツェにより救出こそされた物の、城内で蜂起してしまった民衆を見捨てて引き返すわけにはいかず、前へ進むほかなかった。この合流の際、孤立していた部隊を救うため奮戦していたアグリストVIが戦死したとの報告を受け、オージェはその死体を回収させた。
城門へ向けて突撃してきたシュヴァルツ・カッツェだが、その殿に置かれた一名が異様な戦闘力を示しており、オージェは興味をそそられた。人ならざる戦い方に追撃が緩んでしまい、ここで始末しなければ悪影響が出ると判断したため、自ら城外に出て相手をすることにした。
人ならざるティアマット信者
オージェを待っていたのは弩兵の射撃が頭部を貫通してもそれを抜き取り、矢によって明けられた穴もすぐにふさがり、何事もなかったかのように戦闘を続けるダークエルフ、ヴァイエンだった。アグリストVIが浄化を成功させたアグリストVの養子であった事、そしてそのアグリストVと共に浄化の旅に出た熱心なティアマット信者。オージェが知っていたのはそこまでだった。
バルカムット人の中には稀に死した際に無念から自身をアンデッドとして操作する事がある。傷まで治ると言う話は聞いたことが無かったが、目の前で起こっているのはそれに近いものと判断した。そして、メタトロンと呼ばれたダークエルフもまた異様なまでに傷の治りが早いと言う話も聞いていた。ヴァイエンはその両方を発現させている。そう考えたオージェは死体を始末する酸の使用を打診し準備をさせた。
準備のための時間稼ぎと確実に相手に当てるための体力削りを目的としてオージェは死体の軍団をけしかけた。
たとえ四散したとしても死体はその一部をヴァイエンに絡み付け、徐々にその体積は大きく、重しとしてのしかかっていった。いくら人ならざる力を持っていたとしても限度があり、その動きは次第に遅く、鈍くなっていった。酸の準備が出来る頃には人なのか、肉塊なのか、一目では判断付きかねる状態であった。
優秀な死体の破損を惜しんだオージェは死体を回収し丁重に埋葬するよう指示を出した。
殲滅
ヴァイエンを撃破したことにより余裕が生まれた部隊はシュヴァルツ・カッツェの殲滅を開始した。
ヴァイエンがあまりにも強かったために味方の兵士らはなかなか攻撃を開始しようとはしなかったが、一人、二人と倒れていくうちに恐怖心は恨みへと変化し、シュヴァルツ・カッツェの隊員は死体を次々に切り刻まれるなど、残虐な仕打ちを受けてしまった。
優秀な戦死の死体は出来るだけ損傷の無い状態で得たいと考えたオージェは戦士への敬意を持つよう通達をだし、死体を切り刻んだ兵士らを生きたまま寸断する見せしめに処した。その後、シュヴァルツ・カッツェの兵士らは場合によっては生きたまま捕虜にされるなど比較的マシな扱いを受けるようになる。
残念ながら市内に逃げ込まれてしまい市民の抵抗軍との合流を果たしてしまったが、勢いに乗る彼らを若い新たな頭首が抑えられるはずもなく、戦闘経験も装備も作戦もない抵抗軍はあっという間に制圧されてしまった。
アグリストの称号の強奪が主な目的だったオージェにとってもはや消化試合となっており、早急に撤収をするつもりであったが、なぜか市民を扇動していたアグリストを捕虜にしたという報告が持ち込まれた。我が耳を疑うと同時に喜びを感じたオージェは早速捕虜となったアグリストの元へと向かった。
襲名
アグリストVIIは市民との合流時点で勝ち目はないと悟っていたため必死に降伏を解こうとしたが若さゆえに統率しきれず、結果として多くの仲間を死なせてしまった事を悔やんでいた。
オージェはやや不本意ではあったが、アグリストの称号をあるべき所に帰す機会と考えながら話を進めた。聞いていたアグリストとは別人である理由とその経緯。守り切れずぐずる若を奮い立たせるため、アグリストVIが贈ったものと聞いた時には思わず笑いがこみあげてしまった。
もはや戦意の無い少年であったが、心の拠り所でもあったアグリストの称号については頑なに譲るのを拒んだ。そこでオージェは抵抗軍の捕虜を目の前で拷問にかけ、少年の心を折った。アグリストの称号、そして少年の命と引き換えに市民の命を保障し、以後自らをアグリストVIIIと名乗った。
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- 最終更新:2022-03-25 15:26:44