ヴァイエン

プロフィール

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登場作品:[[]]
性別:女
種族:ダークエルフ
所属:エル・ダナーン,聖誓士団,傭兵(シュヴァルツ・カッツェ

 
 元ティアマット信者。若かりし日にアグリストVと共にアグリストIVエボンフラム強奪を狙い、襲撃を行うが返り討ちにあった。

 その後、聖誓士団に人足として駆り出されアグリストIVの護衛を務める。

 アグリストIV引退後はアグリストVと共に浄化の旅を行い、エボンフラムの浄化とダークエルフへの変化を目の当たりにし喜んだ。しかし、凱旋してからエルフダークエルフの軋轢がより一層ひどくなってしまい、アグリストVと共に絶望を抱きエル・ダナーンを離れる。

 傭兵活動中、養子を得たのはいい物の女子の事が全く分からない夫、アグリストVの頼みもあり母親を務め家族を作る。

 アグリストVIの敵討ちの際にはアグリストVの代わりに矢を放ち、アグリストVの親としての最後の勤めに手を貸す。その死の際、同じように殺してくれとアグリストVIに頼むが同じ日に両親を殺せないと泣きながら断られたため生き残る。

 アグリストVIとはその後も共に活動を続けたが、彼女の仕事が貴人の護衛中心となったころにはダークエルフである事を理由に自ら戦場へと戻り傭兵活動を続けた。

 アグリストVIの雇い主が没落し、失地回復の軍が欲しいと知らせを受けた際には、ダークエルフ中心の傭兵集団、シュヴァルツ・カッツェ50名を率いて真っ先に駆け付けた。戦闘経験の少ない解放軍に訓練と指揮の基礎を教え、組織作りに貢献した。

 都市解放に貢献はしたものの、抵抗軍内部の裏切りにより孤立したアグリストVIの脱出のため死力を尽くす。また、死の間際にアグリストの名前を贈られたアグリストVIIが都市にたどり着けるよう奮戦し、戦死した。

 死後、埋葬された墓地は掘り起こされた形跡があり、何者かが死体を持ち去ったものとみられている。

元ティアマット信者

 元々はティアマットの強い信者で過激派に属していた。

 彼らにとってエボンフラムは始祖ヨシュアが愛用していた武器で、聖誓士団の言う呪われた武器は言いがかりに等しかった。ダークエルフが持ち、ティアマットに奉仕するものこそふさわしいと考えており、特に彼女の属していた過激派は強襲しての強奪を主張していた。

 もちろん主張のみであってマムルークとは距離もあるし戦争する気は無かったのだが、ヴァイエンのように若い層はそこまで考えは及んでいなかった。エボンフラムの所有者、アグリストIVがあいさつのために不定期に訪れていたことを知った彼女らは次に訪問する日を伺い、近くの宿場に姿を現したという報告を受けた。

 移動ルートを検証し、腕の良い数名の仲間とともにアグリストIVを襲撃したが返り討ちにあい、捕縛されてしまった。

 当時のエル・ダナーンの代表はただでさえティアマット信者とエルフの間にある溝が深まる問題と頭を悩ませたが、アグリストIVの機転により抜き打ちの演習という事で誤魔化された。代わりにいつでもエボンフラムを狙って襲っても良いという条件の下荷物持ちが要求され、襲撃犯のなかからヴァイエンと後のアグリストVの2名が選ばれた。

 当初は二人して毎晩のように襲撃を繰り返したが、エボンフラムに触る事すらできなかった。二人の体調とはお構いなしに、ある時は戦場への参加、ある時は盗賊の壊滅と、アグリストIVは浄化の噂のある所へと気ままに足を向けたため、やみくもに強奪を試みていると逆に自身の体が持たなかった。ある盗賊からの夜襲をきっかけに強奪の回数は減り、3人は次第に普通の旅の一行となっていった。

 次第に聖誓士団の目指している物、エボンフラムの浄化が目指している物、そしてエル・ダナーンエルフダークエルフティアマット信者とそれ以外の間にある確執が何であるかが理解できて来た彼女は自ら進んで聖誓士となり、アグリストVもそれに従った。

 二人が聖誓士として一人前に活動できると確信したアグリストIVはどちらかにアグリストの称号を受け継ぐと伝え、ヴァイエンエルフがこの旅を完遂する事に意義が有るとして辞退した。

浄化の成功と放浪

 アグリストVエボンフラムの浄化を引き受けるにあたって最初に取り掛かった仕事がエル・ダナーンティアマット信者の説得だった。彼らの説得のためにヴァイエンも自身がダークエルフとして、ティアマット信者としてエボンフラムの力は一旦モーゼに返さなければならないと説得を手伝った。

 返すことが出来ればつながりが存在する証明になる。モーゼの導きがまだ存在し、我々はまだ彼女の庇護下にあるからこそ肌が黒いし、他のエルフよりも若干身体能力が強い。モーゼダナーンニヴァーナも、導き守りたかったものはダークエルフエルフの共存であると強く主張した。そしてその証明をせんがために、アグリストVとの結婚がエル・ダナーンティアマット神殿で執り行なわれ、同時にアグリストIVからアグリストVへの襲名の儀式が行なわれた。

 この二つの儀式により、エボンフラムの浄化の旅はティアマット信者とそれ以外、エルフダークエルフの間にある確執の溝を乗り越えるためのエル・ダナーンの国策としても位置づけられた。

 むろん聖誓士団への全面バックアップは問題があったため、あくまでもアグリストVの活動期間中と時間制限は加えられたが、二人にとっても単なる妄執からより大きな使命へと塗り替えられた瞬間でもあった。外交の使者として聖誓士団の本部へと足を運び、交易の窓口などの親書を手渡したのち浄化の旅を引き継いだ。

 実はアグリストIVと共に各地を巡っていた時ですらティアマットを封印した決戦の地には赴いていなかった彼らは、エルフの子孫としてまずは報告に行かねばならないと考え聖誓士団が手入れをしていた決戦の地を訪れた。しかし、そこにあったものはティアマットの信者らが語り継いできた景色と全く異なる景色であった。

 二人はこの景色の食い違いを本部へと投げかけ、聖誓士団ティアマット信者と協力してお互いの伝承の突合せを行い、結果、聖誓士団が手入れしてきた場所はダナーンが身投げをした場所であって決戦の地ではない事が判明した。

 当時の親衛隊で討伐に参加したものがニヴァーナだけであった事、そして参加しなかった親衛隊は日報として行動した箇所をつぶさに記録していた事。さらにティアマット信者が決戦の地の情景を正確に伝えていた事などから、エル・ダナーンの協力を経て記録と地図を整理し、討伐に至ったであろう地の絞り込みを行った。

 この作業により補給路やかつての簡易基地の跡地などが次々に判明していき聖誓士団は新しい発見に湧きに湧いた。探索の戦闘にはアグリストVヴァイエンが立ち、ついに人工の祭壇らしきものを発見する。

 石がつまれただけの簡素なものであったが、手入れされた人工物はそこが明らかに何者かが管理している特別な場所であることを示していた。ティアマット信者と聖誓士団は手入れを続けていた何者かに感謝し、祭壇に祈りをささげた。

 この祈りをささげた瞬間、エボンフラムは最後の力をアグリストVへと注ぎ込み彼をダークエルフへと変化させた。刀身から発せられていた黒い炎は姿を消し、ここに悲願であった浄化が成功。聖誓士団はこの一報をもって解散が決定し、アグリストVヴァイエン、そして助力の為に出向いていたティアマット信者らは元エボンフラムを携えてエル・ダナーンへと凱旋した。

 エボンフラムの浄化の成功、そしてアグリストVダークエルフ化はエル・ダナーンにおける2種族間の軋轢を解消するものと関係者はみな期待したが、結果としてダークエルフ選ばれた物の証と言う者の登場と、呪われた者と言う者が現れてしまい、差別、迫害はより酷くなった。

 この結果に失望したアグリストVエル・ダナーンを離れる事を決意し、ヴァイエン、そして浄化の旅を手伝ったティアマット信者の一部がこれに同行。

 ダークエルフエルフが混在する傭兵集団、シュヴァルツ・カッツェが誕生し、彼らは雇い主を求めて戦場をさまよった。

傭兵活動

 元々彼らは部隊を率いる事が苦手だった。それゆえに指揮を執るような立場にはつかなかったが、ダークエルフの見た目とそれに合わせた黒い鎧は恐怖をあおり、それなりに名声を得た。雇用主の側はダークエルフに対する偏見からあまり長期間彼らを手元に置こうとはしなかった。

 時には雇用側からトラブルの元であるダークエルフを押し付けられたり、あるいは放浪中のものが食い扶持を求めて合流してきたため、所帯は徐々に大きくなっていった。

 合流したダークエルフティアマットへの忠誠を誓いティアマット信者になること、傭兵として死ぬ契約を結ぶこと、死んだ際の財産は全て隊の物になる事などを契約し実戦へと足を踏み入れて行った。エルフも少数いたが、彼らの心はダークエルフであったし、ダークエルフの子を望んだ。

 エル・ダナーンへの失望の反動のようなものだったと言ってもいい。

 ヴァイエンはそういった活動を広げるため、奴隷市場などで売られるダークエルフを購入して一人でも救おうとした。アグリストVは部隊維持のための資源面であまり気乗りはしていなかったが、町に拠点を作らず、山の中にある洞窟を勝手に占拠し、畑仕事なども出来るようになった辺りから人の買い物に付き合うようにはなっていた。

 残念ながらダークエルフは出品される前に悪魔の子として処刑されてしまう事が多かったため、奴隷市場に出回ることは稀だった。そんなある日、アグリストVが何故かエルフの子を買い取って戻ってきてしまった。

 ヴァイエンは飽きれながら叱りつけたが、エルフの合流が久々であったため皆がエル・ダナーンを懐かしみ、彼女は好意的に受け入れられた。この時、彼らは誰も気が付いていなかった。彼女が、自分たちが襲撃した村の生き残りであったことに。

 ヴァイエン自身、妊娠して動けなることを嫌がったが子供は欲しいと常々思っていたため、奴隷市場で拾い上げたエルフの子、インゲアグリストVヴァイエンの養子となり、大切に育てられた。

娘のトレーナーとして

 養子であるインゲは良く働いた。仲間や他部隊の為の炊き出し、装備品の手入れや移動。男の多い傭兵稼業において女性と言うだけで目立ったし、傭兵団の長の娘とあればより注目も浴びた。言い寄るものも当然多かったが、インゲはその全てを断りながらも友人を増やしていった。

 ヴァイエンは、インゲは養子といっても元奴隷であるためにここを追い出されれば先が無い、そう言う気持ちが仕事をさせている物だと思い込んでいた。愛情を示すため、言い寄る男を全員応援し心の底から娘と思っているとその都度アピールしていたが、インゲの本心はそこには無かった。村を襲った相手に対する復讐の機会をうかがうため傭兵の友人を作る必要があったから、弱点となる恋人を拒絶し、幅広い友人を作ろうとしていたのだった。

 言い寄る男の中には強引な手に出るものも有ろうと言う事で基礎的な訓練の開始が伝えられ、新兵の面倒を見るヴァイエンインゲの訓練を主に担当した。

 独自の調査力を身に着けたインゲは犯人がアグリストと名乗る傭兵である事実まで突き止める事に成功した。偽物である可能性も伝えられたがこの事実に悩んだインゲアグリストVに仇について相談し、偽物であろうという結論にはお互い至ったものの独自捜査について怒られてしまう。

 この一件が有ってからアグリストVは敵討ちちの為の特訓をインゲに施すことを決意。ヴァイエンと共に決戦用のメニューを考案し団員と遜色ない戦闘力を身に着けさせた。

夫との死別

 ヴァイエンは夫のこの行動が不思議だった。インゲの仇は自分自身であると解っていて、なぜ特訓を施すのか。誰か別の身代わりを立てる予定でもあるのか。メニュー考案時に投げかけたこれらの問いに、夫は自分自身を殺させるつもりだと答え深い悲しみを覚えた。

 戦いしか知らない不器用な人だから多分本気で言っているし、場合によってはインゲを手にかけるつもりでもいる。ダークエルフになったことに後悔はなくとも、その後のエル・ダナーンでの出来事に失望を抱えていた夫は、出来れば死んでしまいたいとどこかで思っていた事もヴァイエンは理解していた。

 夫の望みと娘の望みをかなえるためには、夫の技をそのまま教えてはいけないと感じたヴァイエンは別途特別メニューを用意し、夫の予想もつかない動きを一つ隠し技として伝授した。

 インゲの捜査能力の向上との勝負だった。残念ながら技伝授は間に合わず、完成度は低いまま娘と夫は偽物のフリをした夫との決戦の日取りを決めてしまった。

 インゲが切りかかる前に夫が矢を放ち、それを合図にインゲが切りかかる。二人が交わした約束はこうだった。……つまり誰かがアグリストVに向けて矢を放たなければならい。インゲを生かすため、ヴァイエンは自らその役目を引き受け、早着替え用の傷んだ黒い鎧を用意した。聖誓士時代に夫が愛用したものだった。

 待ち伏せまでは自身がその鎧を着用し森へと入り、夫と合流した後に急ぎ鎧を交換した。

 待機しているインゲの元まで帰った彼女は手で合図を出し二手に分かれ、引き絞った弓をふとももへと命中させた。引き絞る間、娘か、夫かどちらかを失わなければならないという葛藤が手元を狂わせたが、二人の望みは合致していると結論を出した瞬間に迷いは晴れ、頑丈な鎧を射抜く一射を放つことに成功する。

 インゲはそれを合図に切りかかるが、流石にメタトロンである。傷の治りが早く、受けた矢も体外に排出されようとしていた。力でも、技でも押されるインゲを生かすため、ヴァイエンは胴めがけて矢を放った。近距離で結びあう二人。少しでも逸れればインゲに誤射してしまうところを神業ともいえる集中力で支援し続けた。

 かつてメタトロンを殺したことがある者は少ない。唯一と言っていい事例はヨシュアの暗殺で、毒が使われたと言う伝承にならい、矢には全て毒が塗られていた。掠めただけでも全身がしびれるような毒であったがそれでもアグリストIVは戦いを続けていた。

 その姿は娘の成長を楽しみ、将来を楽しみ、自分自身の死を喜んでいるかのようにヴァイエンの目には映っていた。

 援護の成果もあり、二人の死闘はインゲの勝利に終わる。そしてインゲは顔を見るために兜を取り、その下から出てきた顔に驚愕する。致命傷を受けていたアグリストVアグリストの名前をインゲに送り、愛する娘の手で死にたいと懇願し、アグリストVIはその願いをかなえた。

 ヴァイエンは泣き崩れる我が娘に言葉なく歩み寄り、その場に膝から崩れ落ちた。すべてを知っていたうえで力を貸したと全てを打ち明け、インゲに殺してほしいと懇願した。

 どちらが勝つにせよ愛するものを失う結果にしかなかった彼女だが、それより重い苦しみを娘に背負わせようとしている事実に気が付いていなかった。

「私に、一晩で二人も親を殺せと言うのか」

 愛する人を失ったのはこの子も同じで、手をかけた分苦しみも大きいに違いない。そう思い至ったヴァイエンは懇願を取り下げ、娘の為に今までよりもしっかりと生きなければいけないと決意を改めた。

部隊の運営と維持

 部隊の運営と維持のために暫くアグリストVIとなったインゲを手元に置いたが、戦場において彼女は刃物を持つのを嫌がった。切りかかられても相手を無力化する事しかできず、殺し合いの場では足手まといとなった。

 このままでは戦死すると判断したヴァイエンは、刃物よりも鈍器、殺すよりも捕縛の方が重視される現場に送る決意をし、彼女をギークの治安維持部隊へ派遣することにした。街中での軽犯罪者の捕獲、撃退などで活躍した娘は女性であるために貴婦人の護衛に好まれ、とある貴族の専属に近い形での雇用形態を結ぶなどの報告がその都度送られてきた。

 親として子の成長と出世を喜ぶ事が出来る幸せは部隊全体で共有され、部隊は部隊で新たな子を庇護するために放浪のダークエルフを拾い上げた。

 どこへ行っても気持ち悪がられるダークエルフではあったが、逆に言えば土地に対する忠誠心、特定の国へのこだわりがなく雇い主だけに一時的な忠誠を誓う彼らは使い捨ての傭兵としては重宝された。時には逆に罠にはめられ、味方からの攻撃を受ける事もあったが、一定期間の地点の死守を命じられていた彼らは攻撃を加えた味方も容赦なく殺害し、任務遂行後、何食わぬ顔で指揮官とあいさつを交わし部隊の晩餐へと招待した。

 攻撃を加えたものをただ敵とみなすという単純な理念は末端の兵士には好まれ、味方による背中からの攻撃でさえ損害を出さなかった実力は信頼と恐怖を生み出した。

娘からの依頼

 安定した部隊の運営は娘の実績の後押しにもつながった。シュヴァルツ・カッツェの娘と言うだけで実力のある傭兵と見られるようになったからだ。もちろんそれまでの彼女の活躍もあったが、その背景としても力強い存在となれたのだった。苦労と悲しみを背負わせた娘の役に少しでも立てた事がヴァイエンは嬉しかった。

 その娘から有る時ほぼ専属になったという手紙をもらい喜んでいたが、数年してその専属先が危ないという知らせを傭兵仲間から受け取っていた。親が無理に口を出すことはないと思っていたが、とうとうその田舎貴族が家督争いに巻き込まれ封土をすべて失ってしまった。

 娘がその貴族らを連れて逃げてくるのなら受け入れようと準備を進めていたところ、封土を取り戻すための力を貸してほしいと娘がその貴族らを連れて直接頭を下げにきた。

 正直勝ち目のない戦いで全滅の危険性があるとも考えられたためヴァイエンは返事をためらったが、部隊員らは受けるべきだと主張した。土地を失い、放浪する民であるダークエルフティアマット信者の集団である彼らには強く共感するところがあったようだ。

 全滅の危険性を訴えたが、それでも誰かの土地を取り戻せるなら構わないと。その代わり、出世払いで村をひとつこの辺りに欲しいと軽口をたたき、決死隊としてシュヴァルツ・カッツェは解放軍に加わった。

 ティアマットの加護が弱くなったとはいえやはりダークエルフ。大食漢であるため部隊の維持費は若干増えたが、恵まれた身体能力と戦い慣れた経験によりそれ以上の活躍を見せ、作戦の立案などにおいても経験不足の貴族らを導く存在となり、彼らからは暗闇を先導する松明のようなものだと称賛された。エル・ダナーンを去った者たちがかつてのメタトロンと同じ称賛をその身に受けたことは皮肉でもある。

快進撃と裏切り

 しかし逆に言えば彼らの存在こそ身内の解放軍からすると脅威にうつった。流れ者の傭兵のくせに偉そうにという意識と、その戦力に頼らざるを得ない現状、そしてそれを抱える弱小貴族の存在が大きくなっていくことに危機感を覚え、折を見て切り捨てようとする裏切り者の派閥を作ってしまったのだ。作戦の総指揮を担っていたオレスト・ガヴラスはその筆頭でもあった。

 危機感を覚えたオレスト・ガヴラスの派閥は、秘密裏に和睦を結び、若様の一団の壊滅と引き換えに封土の一部を公式に得る約束を取りつけていた。

 いくつかの街を解放し、その中で弱小貴族の夫婦を戦死させてしまう不幸に見舞われた。むろん夫婦の戦死はオレスト・ガヴラス一派による工作であった。彼らは夫婦が居なくなれば契約も破棄され、子供には家臣団を纏められないと考えていたが若様が家臣団をまとめると宣言した際、これまでよりも大きな戦果を上げるようになってしまった。

 快進撃を続ける若様はついに自身の土地を解放していく番となり家臣団の士気も大いに盛り上がった。それにつられて他の部隊も快勝を重ね、元の封土の中でも最も大きな街の解放をかけた戦闘が始まった。オレスト・ガヴラスの派閥は町の解放に興奮して足元が見えない今こそ好機として用意していた暗殺の計画が実行に移される。

作戦本部での殺戮

 ダークエルフの一隊であるシュヴァルツ・カッツェは街の解放の際に先頭に立つと民衆からの支持が無くなるとされ、先行する若様の家臣団には加わらず本陣待機となった。さらに元の持ち主である貴族の軍が中心となって活躍しての解放が望ましいため、家臣団以外の部隊は後方で支援のために待機の体制をとった。これ自体は通例の処置であったためヴァイエンも疑問を持たなかった。

 しかし、いざ戦闘が始まると報告以上の軍勢が強襲をかけ、家臣団の旗色は中盤からかなり悪くなる。ところが支援のために待機した他の部隊は一向に動こうとしなかった。

 ヴァイエンはあわてて部隊を率いて作戦司令本部へと駆け込み理由を問いただした。この問いに対し、喋りたくて仕方が無かったオレスト・ガヴラスの一派により援軍を派遣せず全滅してもらうと笑いながら事実を打ち明けられる。怒り退出しようとするヴァイエンを衛兵が取り囲み、本部で彼女は殺される……予定だった。

 しかしその衛兵らは瞬く間に首を跳ねられ、逆に作戦本部にいた貴族はその殆どがヴァイエンの手にかかり、生き残ったオレスト・ガヴラスら3名は人質として連行された。

 当然解放軍の裏切り者として、そして敵討ちとしてシュヴァルツ・カッツェに多数の部隊が攻撃をしかけたが人質を盾にした戦法と元々の経験の差によりあっさりと突破されてしまった。

 味方の包囲を抜けた彼らは一目散に若様の一団へと合流したが、残念ながらアグリストVIは重症を負っていたためそれ以上の同行は不可能であった。アグリストVIは若様にアグリストVIIの名称を贈り、ヴァイエンは娘が受けた護衛の依頼を引き継いだ。

最後の戦い

 包囲を幾度となく突破するシュヴァルツ・カッツェの奮戦をみた市民らは盛り上がってしまい、部隊の到着を待たずに市内での蜂起を開始してしまった。しかし、これこそ防衛の任務についていたオージェが待ち望んでいたものであった。市民が扇動されたため、やむなく市民に手をかけた。という大義名分を手に入れる事に成功した。

 手加減をする必要のなくなったオージェは一旦解放された城門の奪還に動き、外で戦うダークエルフの一隊を押しつぶすよう指揮を執った。

 人質として連れてこられた解放軍の指揮官らにはもはや人質の価値は無く、部隊員の一人とみなされてしまっていた。ヴァイエンは彼らに戦死した隊員の剣を預け若様の護衛を任せる賭けに出た。万が一捉えられた際、交渉の窓口になってくれるかもしれないと言う期待を込めてである。

 上がり始めた城門に対して若様と裏切り者の指揮官を強引に突入させるためシュヴァルツ・カッツェヴァイエン一人を城外の敵の為に残し、すべてを城門へと向かわせた。

 一見無謀な行為だが、浄化の旅でメタトロンと同様の力を身に着けていたのはアグリストVだけでは無かった。純粋にダークエルフだったヴァイエンは傷の治りや筋力に関してはアグリストVを凌ぐ能力を授かっていた。一人の方が暴虐的な力を発揮しやすかったのである。

 部隊の支援の為、そして決死の突撃を意味するために全力で投げつけた槍は城門ごと城壁を破壊し、守備兵らは新たな工場兵器が投入されたのかと旋律し、戦場で彼女と相対していた敵部隊はその異常な腕力をもったダークエルフに恐怖を覚えた。彼らにとって小さなティアマットがそこに存在したのである。

 戦えば身体が四散する。

 まったくもって勝ち目の見えない相手に包囲は一瞬で遠巻きになり、ヴァイエンに切りかかろうとするものはなかなか現れなかった。白兵よりは射撃だと考えた一隊の弩兵が一斉射撃を行った際、彼らはさらに恐ろしいものを目にする。

 10数本刺さった矢を引き抜き、あるいは残った矢じりを筋力で体外へ排出した後、見る見るうちに出血が止まり傷跡も残さずきれいな肌へと戻っていく人間離れした修復能力を目の当たりにしてしまったのだ。

 戦意を喪失した敵に対し、ヴァイエンはそこに転がっていた死体から槍を拾い上げ、敵の塊へと投げつける。

 着弾と同時に土煙と大勢の鎧を着た兵士が宙に舞い、指揮は大いに乱れた。

 逃げ場がないと悟った兵士らはここへきてやっと突撃を開始するが、統率の取れない襲撃のため次々に蹴散らされてしまい、とうとう立っていても恐怖で動ける者がいない状況にまで突入してしまった。

 戦況を見たオージェは自ら兵士を率いてヴァイエンの討伐に出る。ヴァイエンは新手に対してこれまで同様に力業で押し切ろうとしたが、オージェの部隊は見た目こそ若い兵士だったが、中身は全員アンデッドであった。このため、傷を受けても引かず、四散しても新たな死体が加わるという形で減らない物量でもってヴァイエンの体力を消耗させていった。

 いくらメタトロンと同様の力を持ったダークエルフと言えども、体力には限界があり、オージェもまた決して手を緩める事は無かった。最終的にはアンデッドを葬る最大の方法、酸の投擲によりヴァイエンの頭部は破壊され、彼女は二度と立ち上がることはなかった。

 奮戦した勇者の死体はオージェの手により丁重に埋葬された。優良な素材を破壊してしまったことにオージェは心を痛めたと言う。

 なお、その後埋葬の地が盗掘にあった際、中には綺麗に再生したダークエルフの体が存在したという噂がある。その美しさに見とれてしまった盗掘者は逃げそびれてしまいお縄になったと言われる。

利用mod

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  • 最終更新:2021-03-04 11:36:03

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