パクアヌラー

プロフィール

登場作品:女将軍モーゼ
性別:男
種族:ヒューマン
所属:バルカムット帝国

 バルカムットの軍人。実力は平均よりやや上程度。元は石切り場でオークエルフ等、奴隷の監視を行っていた。

 モーゼが事件を起こした石切り場で勤務を行っており、アグリストIIヨシュアダナーンに絡んだ兵士の一人でもある。同僚の死体処理のため運よく生き延びた彼は、ツィドユウの遺跡を討伐する部隊に編入され、そこでアグリストIIと再会する。

 もともと他種族に対する差別が強い人間であり、さらには同僚を殺害したアグリストIIに対しては悪態をつくが、何度も作戦などで肩を並べるにつれ尊敬の念が生まれ、アグリストIIをサポートするようになる。合同演習などでは、周囲の差別の目からアグリストIIを守るため、片時も傍を離れなかった。

 バルカムット崩壊後、アンデッドとなったサウロに、愛国心、そしてモーゼの一連の経緯の引き金を引かせてしまった当事者である負い目を利用され、散策に出たモーゼの奇襲を請け負う。返り討ちにあい死亡してしまうが、サウロの手により知性の無いアンデッドとして復活し、彼女をその手にかけた。

一般的な軍人

 生まれも育ちも平均的なバルカムット軍人であった彼は、そこそこの運動能力のおかげで周囲よりちょっとだけ抜きん出た存在ではあった。決して一位にはなれないまでも上位集団には必ず顔を見せる、そういう存在だった。それなりの努力で評価も上々であったためプライドも高く、バルカムットの兵士である事に大きな誇りを抱いていた。

 軍隊への配属も、士官学校での好成績も、石切り場への配属も、その全てが彼自身の誇りであった。政治的な思想も一般的な軍人らしく保守寄りであるが、セティの為政にそれほど大きな疑問を抱いているわけでは無かった。その彼がセティの為政に協力的になったのはある事件がきっかけであった。

モーゼの虐殺

 パクアヌラーアグリストIIの因縁は深い。石切り場の監督中、アグリストIIパクアヌラーの同僚を殺害したのだ。ダナーンと同僚の口論が暴力にまで発展したのだが、当然これは制圧の対象となった。たまたま視察に訪れていたモーゼの指揮の元、パクアヌラーは同僚の死体の処理を命じられ、他の者はアグリストIIの制圧に充てられた。

 モーゼはこの時すでに大規模反乱の計画を完成させており、アグリストIIらの行動は丁度良いきっかけとなった。そのため、暴動を起こした3名を後継者とするためわざと逃亡させ、時間を稼ぐため石切り場にいた全ての人間を虐殺した。パクアヌラーはこの虐殺唯一の生き残りだった。

 彼に最初に死体として襲い掛かったのは処理を命じられた友人だった。撃退した後、警戒しながら周囲を見渡すと死体が兵士はもちろん奴隷らにも襲い掛かっており、大混乱を巻き起こしていた。死体らの暴動が落ち着き、それまで戦闘を避けていた彼は他の生存者を探した。特にこの暴動の報告を行うためモーゼの姿を重点的に探したが生存者は彼だけであった。同時にモーゼの死体も確認できなかったため、彼はモーゼは脱出に成功したものと考え首都アテンへと報告に戻る。しかし、彼を待っていたのは意外な報告だった。

 先に帰っているだろうと思ったモーゼの姿は無く、それどころかいくつかの砦を突破してバルカムットから去ったとの知らせ。そして、どうやら自分自身が石切り場唯一の生き残りである事が伝えられた。と同時に生き残れたことに対する疑問の目が向けられるようになり、異端者の集まりであるアグンヌへの異動が命じられた。

 元々セティの意見に賛同してアグンヌに異動したわけでは無いため、アグンヌでの立場は微妙なものであり、またスパイの疑いがある彼はアグンヌ内でも担当が転々としており、一つの仕事に深くかかわるような事はなかった。半面、すべての業務を見ることになったため、アグンヌの現場間のやり取りなど、彼の提案でスムーズに業務が行われるようなった部署も多い。

アグリストIIとの再会

 ツィドユウ討伐隊は彼が比較的長い期間仕事を任された職場の一つで、原則として他に仕事が無い時は討伐に参加していた。彼自身の戦闘力が平均より高く、アンデッド操作の利かない地においては貴重な戦力となったためであった。

 体を動かせば左遷された事実も忘れられることから、彼自身、この職場をそれなりに気に入っていた。しかしこの職場は奇跡の再開をもたらした。

 ある日の討伐のこと。討伐隊から一人戦死者が出た。それ以降洞窟内のアンデッドの動きが活発になり、統率の取れた動きを取るようになってきた。ゼーの指揮の下なんとか壊滅には至ったが、その中で一体脱走しかける事態が発生した。包囲を突破する器用な動きを見せたアンデッドはたまたまデニアの依頼によって訪問していたアグリストIIの手により倒された。ゼーはこの恩人を招いて歓待をしようとしたがパクアヌラーは石切り場の疑惑を確かめるため、直接話がしたいと食い下がった。

 部下の頼みを渋々受け入れたゼーは自身のテントで意図を問いただす。パクアヌラーは自分以外すべてが殺害されたこと、兵士はもちろん、奴隷らも殺されたことを語り、アグリストIとの論争に発展した。ゼーの一喝を受け引っ込めはしたものの、ゼーアグリストIIに遺跡内部の探索を依頼した際に激高、単身遺跡の中へと突入した。

 ゼーアグリストIIに依頼した内容は、内部で戦死した同僚の始末だった。動ける、強い死体を処分することは後々の安全を確保するためにも重要で、この内容には異存はなかった。しかし、ふらっと訪れたオーク、さらには自身の同僚を殺害した人間に依頼したことは彼を憤慨させるには十分だった。

 怒りに任せた突入ではあったが、幸運だったのは討伐の直後であったため新たに迷い込んで出来上がった死体も少なく、内部の探索は比較的安全であった。このため件の同僚に出会うまではそれほど大きな苦労をしなかったが、問題はここからだった。

 同僚であった彼女は最近になって戦績を上げた兵士で、武器の新調をした際に体に合うという理由からこれまでとは別人の強さを身に着けていた。ただし、急激な成長に身の回りを見る慎重さが犠牲となり、周囲との退却のタイミングがズレたために孤立し殺害されてしまった。以前の彼女であれば、パクアヌラーよりも弱かったためこの探索はむしろ適任であったかもしれない。しかし、生前、死の直前の強さは明らかに彼女の方が上であった。

 発見し、襲撃したまでは良かったが技術面ではともかく、体の崩壊を顧みない腕力はケタ違いでパクアヌラーは防ぐのが精いっぱいであった。特に死体は体力と言う物が存在せずバテるということがない。一方、パクアヌラーはいかに鍛えた兵士と言えども必ず疲労する。防戦により心身ともに削られていった彼はとうとう槍を弾き飛ばされてしまった。

 この危機に体を張って飛び込んだのがアグリストIIであった。ゼーより救出の依頼を受けた彼は、イノとともにパクアヌラーを捜索し、打ち合う音を聞いて駆けつけた。過去のわだかまりは一旦捨て、アグリストIIらと協力してかつての同僚を撃退した一行は地上へと戻り、ゼーの手引きの元渋々謝罪と和解を行った。

理解者として

 半ば強制的ではあったが謝罪と和解を行った事と、命を救われたという負い目から、パクアヌラーは徐々にアグリストIIに心を開き始めた。他のオークと接する機会も増え、それなりに会話を交わすようになった事も心を開く要因となったかもしれない。

 同時に、アグンヌで仕事をしている、ただそれだけで同じバルカムット人からも下に見られる傾向は、それなりにプライドの高い彼を刺激し、アグンヌ寄りの思想を持つ後押しともなった。気が付くと彼はアグリストをもっともよく理解する親友に近い立ち位置となっていた。

 彼が明確に理解者であると理解されるようになったのは、合同演習の選抜、及び合同演習の最中であった。

 まず合同演習の選抜時、アグリストIIの参加を知った彼は強い反発を示した。これは自身の差別意識からではなく、差別するであろう他の地域の兵士が数多く参加する演習に出すとアグリストIIの身が危険であると判断したためである。しかし、参加はセティの意向でもあったことやアグリストIIが選抜で優勝してしまった事も有り、渋々参加を認める形となった。

 当然、合同演習においてはアグリストIIはもちろん、アグンヌ自体が異端であるため差別の対象となった。この時口にこそ出さなかったが、パクアヌラーはなるべくアグリストIIのそばで戦い、決して一人にしないよう努力した。

 アグリストIIバルカムット帝国内では数少ない作戦を共にした人物であったため友人として大きな信頼を寄せていた。

バルカムット崩壊後

 モーゼによる大規模反乱により、バルカムット帝国の国力は一気に衰退を見せた。しかし、ツィーツィの洞窟の定期的な制圧は国の問題ではなかったために一定の戦力を割かなければならなかった。隊長であったゼーワーゴ制圧、及び防衛に回され、実質的に副官であったイノも救援に回ったのちに行方不明となるなどで、討伐隊は編成の一新を余儀なくされた。

 パクアヌラーは実力が認められ、新規に再編されたツィドユウ討伐隊の指揮を執り、実質的な実戦の場として新兵の教育を担当する事となった。モーゼの反乱がきっかけとなり、各地で起こる反乱、前線への補充等、彼の鍛えた兵士は次々と戦場に立ち、数多くが散っていった。

 元来バルカムット帝国において一度目の死はそれほど悲しむものではなかったが、死亡して帰らない戦友に国の瓦解の姿を重ね、彼の心にはモーゼに対する復讐心が芽生え始めた。芽は徐々に大きくなり、モーゼがヤミとの交戦を始めた頃、ツィーツィの洞窟の担当を外れ、自ら職を辞してヤミへの合流を試みるまでに成長をする。

 間の悪いことに、パクアヌラーティスティに到着する前にヤミは打ち取られたため彼は合流を果たすことができなかった。しかし、モーゼに対する恨みが消えたわけではなかったため、彼はティスティに潜入し復讐の機会をうかがう事にした。

 幸いティスティヤミからの解放により本来あるべき交通の要所としてにぎわい始めたため、潜り込み、まぎれることは容易であった。同時に、モーゼ自身の為政下手により行政は若干の滞りを見せており、反モーゼが組織化されても気づかれることはなかった。

モーゼ襲撃

 この反乱の卵が出来つつある状況をいち早く察知したサウロは魔法の力により彼らを導き、時折報告にあがる不審な一段の報告を隠蔽した。不思議な夢に導かれ、集まった彼らは自らのモーゼへの復讐は神の導きであると確信するようになった。

 そしてサウロの誘導によりモーゼが散策に出たその日、彼ら元バルカムット人らによる襲撃が行われた。しかし、パクアヌラーモーゼの私兵であるカリコの三姉妹には歯が立たず、ここで戦死してしまった。この死体をサウロが操り、戦闘は4対無尽蔵の構図となり、さすがの三姉妹も体力の限界が来てしまった。

 かくして彼の復讐は達成させられたのだが……結果としてティアマットというより大きな危機を産み出してしまい、長期に渡る禍根をデニアが受け継ぐ形となってしまった事は本望ではなかったであろう。


 

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  • 最終更新:2019-02-25 04:33:26

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