ジリス
奴隷を率いた反乱を成功させた、数少ない指導者の一人
プロフィール
モーゼが起こした事件をきっかけに反乱を画作し、成功させた数少ないエルフ。同じくバルカムット帝国に対して反乱をおこし、奮戦していたライゾーと連絡をとりあい、長期間にわたり抵抗を続けた。モーゼが脱出の手引きを行った際、自勢力を率いてこれに参加し、行軍面でも大きな役割を果たした。なお、そのやり口は虐げられた鬱憤を晴らすかのごとく、やや過激であり、反抗に参加しないものは敵性があるとみなし迫害を行った。
やや歪んだ性格と奴隷生活から魔法使いになっており、反乱の指導者となれたのも、また、戦闘経験の浅い奴隷のみの集団、エルフのみで反乱を維持できたのは、この魔法のお陰でもある。また、彼女が占領したトリケゴはモーゼが事件を起こした場所であり、モーゼのより人間の死体を好む植物の種がばら撒かれていた。このために新陳代謝のないアンデッドにはカビや植物が生え、草木が育つなどの現象が起こり、アンデッドが使い物にならなくなっていた。同時に、ジリスが元々働いていた石切り場で手にしたハンマーがアグリストIのかけらで、彼女に力を与えていたこと。そして、ジリス自身がエルフであったためか、彼女の魔法が植物の扱いに長けていたため、生活圏では通常の成長に押さえられたことなど、幸運が重なり続けた偶然の産物でもある。
バルカムットに抵抗している間は巨大な敵があったため、比較的よい指導者ではあったが、シナイ山到着後、徐々にモーゼに対する不満などから対立が深まり、ついにはモーゼ不在時の宴会を主催するという形で噴出してしまう。貴重な食料を無計画に扱われたことに対しモーゼは怒り、ジリスはライゾーと共に捕えられ殺害された。
トリケゴの占拠
たまたま魔法使いになれた運。
たまたまアグリストIの欠片を手に入れられた運。
これらの幸運が重なり成功した物がジリスの反乱だった。労働中、30を迎えたジリスは、自分自身に不思議な力が宿った事に気が付いた。同じく労働している死体にカビが生え始めていたのだ。手入れされにくい労働者の死体なので別段珍しいことではないが、彼女の近くの物だけ明らかにカビが多かった。はじめは小さな気づきであったが、ふとしたことがきっかけでそのカビが自分の思い通りに大きくなる事に気が付いた。自分自身が植物を操れるようになったと気が付いたのだ。
一方トリケゴではアグリストIIら後継者候補を拾い上げる際、モーゼは自身への追撃を押さえるためトリケゴの兵士、労働者を虐殺し、完全な空白地を作り上げた。そこへ滑り込むようにジリス率いる集団が移住したのだ。また、トリケゴの死体と言う死体にはある特殊な種が植えつけられていた。人間の死体に好んで根を伸ばすよう品種改良された植物で、主に凶悪犯罪者の復活を阻むために使われる物だった。
トリケゴの死体に植えられた植物はジリスにとっては最大の幸運であった。死体を好む植物で、繁殖の為に種を飛ばす。となれば、攻めて来るバルカムット軍の死体を完全に封じることが出来るのだった。元々物量の大半を死体に頼っているバルカムット軍、そして戦術の基本が物量のバルカムット軍では、死体を封じ込まれると制圧が難しい。また、各地で反乱が起っていたため、まとまった生きた人間の戦力を整えることが難しかったのも幸運であった。
こういった幸運が積み重なった事により、ジリスの反乱は軌道に乗る。反乱に失敗した者らの合流は毎日のようにあり、一大勢力を築き上げていく事となった。
ニヴァーナとの出会い
ジリスの功績として最も称えられるべきものはニヴァーナを拾い上げた事である。ジリスが居たかからこそニヴァーナはモーゼと出会い、ニヴァーナが居たからこそヨシュアは親衛隊を安心して留守にすることができ、ニヴァーナが居たからこそエル・ダナーンは建国の歩みを確かなものとした。
当初、ニヴァーナは戦闘に志願しなかった。かといって裏方で協力的であったかと言うとそうでもなく、どちらかと言うと非協力的な家の一員に過ぎなかった。集団を率いる者として、また、劣勢にある状況下においてはこういった和を乱す集団に一定の制裁を加えるのは当然の事と言える。この制裁を加えた際、家から志願して来た人物がニヴァーナだった。こうして、家からは戦力を供され、ジリスからは一定の罰が与えられたという事で、非協力的であった点に関しては不問とされた。ただし、一人を生贄にするのはやはり問題が有るという事で、裏方の作業に今後は参加するよう要請が行われた。
ニヴァーナには自殺願望があった。生きる事に絶望していたと言っても良い。しかし、自分自身を傷つける勇気は彼女には無かった。自暴自棄になりながら常に最前線で戦い、生き残って帰ってくる姿にジリスはサディスティックな欲望が芽生えていった。本人が死にたがっているのは誰の目にも明らかであったため、ジリス本人は遠慮なく前線に送り込み、ニヴァーナもそれに応じていた。
良く解らないまま戦っていたニヴァーナであったが、生き残るという事はそれだけ強くなるという事でもある。いつしかジリスにとっても重要な戦力の一つとなっていたが、それを理解したうえで、どうやって使い捨ててやろうかと日々画策していた。
シナイ山での反乱
ジリスの幸運はどちらかと言うとニヴァーナがもたらしていたものかも知れない。元々ジリスは人の下に付くような人間ではなく、人を支配したいタイプの人物であった。それが、上に表れたモーゼの一言によってニヴァーナはジリスの手から離れてしまった。この時はまだバルカムットを脱出する、という意識が有ったので表面化はしなかったが、シナイ山に到着してからは、徐々にその仮面が剥がれ落ち始める。
シナイ山にて儀式に入る間、群れの留守はダナーンが預かる事となった。モーゼと異なり、ジリスに軍事的な才能は無かったが、政治家としての駆け引きには長けており、この間に各代表者と交流しながら、徐々に政権のようなものを広げていっていた。
ある時、ライゾーの提案で皆をねぎらおうという事になり、現地の獣を狩る事となった。イノシシを一頭手に入れ、それを解体してちょっとした宴会が開始された。群れの一行にとって、新鮮な動物の肉と言う物は久しぶりのごちそうとなり、酒によりハメを外すものが少なからず現れるようになった。宴会は一度では終わらず、次第に規模が大きくなり、連日開かれるようになる。
禁欲的で戒律的な生活を強制されていた所に開放的な催し物がすぐそばで開催された事により、その催し物の為にその日を頑張る者、楽しみにするものが現れ始める。群れにはある種の明るさがともるようになったが、モーゼの意図からは外れていくようになる。
当然、留守を預かるダナーンはこれに抗議した。しかし、強く出る事も難しく、また、ジリス、そしてライゾーによる離脱宣言によりシナイ山は分断されてしまう。モーゼに従う者、ジリスに従う者、どうすればよいか解らない者。それぞれがそれぞれの立場でものを考え発言し、シナイ山は一触即発の混乱状態となった。
この事件は親衛隊とそれ以外のエルフに溝を作る大きな要因となり、後々の両種族間に広がる差別へと繋がってゆく。
ジリスのこういった行動は、周囲に止める者が少なかったことも原因として挙げられる。モーゼ主導の下では軍隊に近い規律的な生活を求められるが、これはモーゼ自身が軍の中での生活が長かったためである。人間には息抜きが必要であったり、そのための楽しい催し物を用意する、といった発想には乏しく、結果として群れには疲労が溜まっていた。ジリスがやりすぎた事は否めないが、モーゼが締め付けすぎた事も事実でありこの反乱はある意味では必然であった。
モーゼは戦術、戦略にかけては天才であったが、人望でまとめるよりも規律と罰、いわば恐怖で人を支配するタイプであり、ジリスは利己的ではあるが政治的な駆け引きで人から支持を得るタイプであった。口先の上手いジリスの台頭は、いわばモーゼの支配に対する反動であり、人間らしさを求めてバルカムットから脱出した者たちの身心の疲労が求めた結果と言える。
この人間らしさを求める願いは、当人らにとっても無意識のものであり、誰一人として上手く言葉には出来なかった。しかし、ジリスの処刑にあたり、ダナーンが必死にこの人間らしい生き方を命がけで説いたため、参加した者、しなかったもの、そして親衛隊を含め、群れの全てが自分たちが何を求めていたのかを理解するに至る。
年表
?歳 | セティ 第66年 末 | 反乱を起こしトリケゴに滑り込む。 |
?歳 | セティ 第67年 | ニヴァーナを部下にする。 |
?歳 | セティ 第68年 | モーゼと合流。同行しバルカムット帝国からの脱出に成功。 |
?歳 | セティ 第69年 | シナイ山にてライゾーと共に造反。モーゼにより討伐される。 |
やられグラフィック
利用mod
関連人物
- 最終更新:2020-09-10 10:31:18