アグリストV
呪われた剣を浄化した英雄
プロフィール
エボンフラムの浄化の成功とエルフからダークエルフへの変貌は、エル・ダナーンにおいて多くの人々に受け入れられると思われたが、ダークエルフからは自分たちが正統であるという主張につながり、エルフからはダークエルフはやはり呪いだという主張につながり、結果としてダークエルフとエルフの確執を確立させてしまった。
浄化の旅
ティアマット信仰はダークエルフの間で根強く残っていたが、エル・ダナーンではエルフの中でも入信者がおり、五代目アグリストはその一人でもあった。といっても信心深いわけではなく、仲のよいダークエルフの友人、ヴァイエンがいたため入信しただけで、ティアマットについて深く知っている訳では無かった。
元々血の気の多かった彼は、ヴァイエンにそそのかされて聖誓士団の存在を知り、エボンフラムと言う奪われた武器の存在を知る。一部の信者がこれを取り返そうと活動していることを知り、過激派の少数グループに参加する。
聖誓士団の設立にはダナーンが深くかかわっていたため、不定期ではあるが、代表者が挨拶へと赴いていた。アグリストVはヴァイエンらと共に挨拶に赴いた聖誓士団の使者に強襲をかけたが、返り討ちにあい捕獲される。時のエル・ダナーンの代表はティアマット信仰とエルフの間の溝が深まる事に心を痛めたが、襲われたアグリストIVの提案で襲撃事件は聖誓士団の抜き打ち訓練とし、彼らは新入りとして迎え入れられることとなった。いつでもエボンフラムを狙っても良い代わりに、浄化の旅に付き合ってもらう事を条件とし、その代表としてアグリストVとヴァイエンが選ばれた。
浄化の旅の道のりは、そもそもが当てもない探求であったため、噂話を聞いては神聖と呼ばれる場所に向かい、ある時は野盗を討伐し、ある時は戦争に加担すると言った具合に心と体の休まる暇もなかなか取れない有様であった。当初はスキを見ては奪還の挑戦を行っていたが、盗賊の夜襲を受けてからはその余裕もなくなり、いつしか普通の旅の一行と化していた。
旅を続けるにあたり、次第に聖誓士団としての自覚が芽生え始めたため、アグリストIVからアグリストVの名を送られ、エル・ダナーンにて襲名の儀式が秘かに行われた。エボンフラムと同時に名前を受け継いだアグリストVは、ティアマット信者にこの浄化の旅はティアマットに力を返す方法を探る旅であると説得し協力をとりつけた。この説得の際、ヴァイエンとアグリストVは浄化の成功がティアマット信者とそれ以外の者の溝を埋めるものになると証を見せるため結婚し、この結婚をもってティアマット信者は彼らへの協力を約束した。
元々手がかりを掴めない旅であったが、一通りの手続きが終わったため父祖への報告としてティアマットの封印を訪れた際に事件が発生する。エボンフラムを作成したティアマットの封印の確認は聖誓士団にとっては大切な物であったが、各地を巡るアグリストの名前を受け継いだ者には中々手が回らず、専ら他の団員の仕事であった。しかし、彼らが確認のために訪れていた場所はダナーンが身を投じた場所であり、実際にティアマットが倒された地とは異なっていた。ダークエルフのティアマット信仰に深く関わったアグリストVは、後回しにしていた封印の地を訪問した際、ダークエルフの伝承と大きく異なり、思い描いていた景色と違いすぎる点を疑問に思い、ヴァイエンとも意見が一致したためこの矛盾点を聖誓士団に投げかけた。
当初管理していたものがオルセである事、その後は時間が経ちすぎて人々からは忘れらされていた事、すでに実際に戦った者は全員が他界している事など、探索は困難を極めた。唯一の救いは、ニヴァーナが対ティマット戦に直接参加しており、ダークエルフがニヴァーナの話を正確に伝えていた事だった。
ティアマットの封印そのものはフェリスが管理をしており、定期的な手入れがなされていた。オルセが作った小さな祭壇であったが、突然現れた人工物は何か特殊な場所であると伝えるには十分であり、そして封印された地を探す一行にとって、そこが求めている地点であることが十分に伝わった。
フェリス自身はこの時留守にしていたため誰が手入れをしているのかは彼らには解らなかったが、手入れをしてくれた何者かに感謝をし、亡き始祖であり救世主の眠りに祈りをささげる事とした。この際、アグリストVが祭壇に近づいたことでエボンフラムが反応し、エルフからダークエルフへとその姿を変化させた。エボンフラムに残った力がモーゼの力とエルフの血筋、そして忠誠心に呼応して起った変化であった。
凱旋と失望
エボンフラムから黒い炎が消え、アグリストVがダークエルフへと変化したと言う知らせは聖誓士団を大いに沸かせ、念願がかなったとして解散となった。それと同時に聖誓士団の名簿はエル・ダナーンへと返却されることが決定したため、代表としてアグリストIVとアグリストVが赴くこととなった。エボンフラムはビルドフラムと名付けられ、エル・ダナーンに収められた。
差別による確執が深くなっていく様子をその目で見てしまったアグリストVは、エルフにもダークエルフにも、そしてエル・ダナーンにも失望し、ヴァイエンら協力者と共に放浪の旅を開始した。自身の本名はこの時に捨てられた。
襲名
エル・ダナーンに失望したアグリストVは、エル・ダナーンを捨て、バルカムット地方を渡り歩く傭兵として活動をしていた。傭兵になりたかったわけではなく、本人に出来る事が戦闘しかなかったからである。幸い、かつてのメタトロンと同等の身体能力を手に入れることが出来たので、用心棒や傭兵の仕事に困る事は無かった。
部隊を率いる事に関しては素人であるため、ふらっと傭兵や用心棒を募集している人物を探してはその日暮らしを送っていた。腰に下げていたビルドフラムももうないため、周りからはアグリストとは呼ばれたが、誰もが伝説に登場するアグリストの襲名を受けたものとは信じず、自称だと思い込んでいた。
いくつもの戦場を渡り歩き、どこかで安らぎを求めていた彼はある日、一人の少女を拾い上げる。戦闘で運よく生き延び、これから売りに出されていた彼女を彼は譲り受けた。経緯を聞けば、自分と同じ名前を名乗るものに襲撃され、逃げていたところを捕まえられたと言う。
何人か偽物がいるからそいつだろうと誤魔化しはしたものの、数か月前に同様の襲撃を指揮していた彼は、この運命的な出会いと罪悪感から彼女を娘として育てると決意し保護下に置いた。娘の名前はインゲ。
アグリストVに保護されてから、復讐を心に秘めたまま周辺のお世話をしたインゲは、知らず知らずのうちに武芸らしきものを覚え始めていた。それを知ってからは戦場で半端に戦うよりは身を守れるように学んだ方がよいと、しっかりとした訓練を開始し、兵士としても肩を並べることが出来るほどまで成長させた。
すでに聖誓士団は解散していたため、アグリストの名前を紡いでいく意味も無かったが、彼にとっては聖誓士団は最後の心のよりどころでもあった。インゲにアグリストの名を受け継がせたいと、師であるアグリストIVには報告を行っていた。
自身が敵である事を誤魔化し続けてはいたが、兵士としての成長に伴いインゲ自身の情報収集力も増え、いずれはお互いに解決をしなければならない日が来ると感じていた。不器用な生き方しかできない彼の取った行動は、我が娘の望みをかなえてやる事だった。その昔、村を襲った人物を共に探し、一人で出歩く日をキャッチし、二手に分かれて襲う計画を立てた。
二手に分かれたところで本人は着替え、合図となる射撃とインゲの援護を妻であるヴァイエンに頼んで行った。その後は実際にインゲと斬りあい、腹部に重傷を負う。そしてとどめを刺す前に、顔を見ようと兜を剥いだインゲに事実を打ち明け、愛する娘にアグリストの名前を与えた後、彼は息絶えた。
年表
?歳 | ダナーン歴266年 | 聖誓士団のアグリストIVを襲撃。返り討ちにあい、危うく外交問題に発展しかける。アグリストIVの旅の人員となることで事なきを得る。 |
?歳 | ダナーン歴271年 | アグリストの名前を襲名しアグリストVに。エボンフラムとその浄化の旅を引き受ける。 |
?歳 | ダナーン歴271年 | 聖誓士団の本部へ襲名の報告へ赴き、ついでに封印の地を訪問。伝え聞いた伝承の地と大きく異なっていたため聖誓士団に疑問を投げかけ、封印の地の再調査が開始される。 |
?歳 | ダナーン歴273年 | エボンフラムの浄化に成功。本人はダークエルフへ。エル・ダナーンへ凱旋。 |
?歳 | ダナーン歴275年 | エルフ、ダークエルフ間の軋轢が酷くなり始める。 |
?歳 | ダナーン歴277年 | 抗争に双方の陣営から参加を求められると同時に攻撃を受ける。絶望しエル・ダナーンを捨て傭兵へ。 |
?歳 | ダナーン歴291年 | 養子を得る。 |
?歳 | ダナーン歴307年? | 他界。 |
関連人物
- 最終更新:2021-12-05 11:49:29